Prinsjesdag

9月19日、オランダのデンハーグではPrinsjesdagが行われました。和訳すると王子の日(sjeとすることで小さな、可愛いとか身近な響きになります)。どんな行事なのかオランダ人に聞くと、「国王がビネンホフ内にあり普段は使わないRidderzaal(騎士の館)で国会開幕宣言、政府予算案を発表する日」「国王がノールドアインデ宮殿から馬車に乗ってRidderzaalに行く日」。断片的な情報をかき集めても全体像が想像できません。政治色が強いイベントに聞こえるのですが、この日の前の週末にマーケットが開かれたり、ビーチでは特別イベントが行われたりするなど、お祭り要素もあるようなのです。

オランダにきて、このイベントを体験するのは初めてです。どんなもんなのか、当日の街の様子を見に出かけました。

 

前日から馬車がパレードするルート上に簡易とは思われないほど重厚な通行ゲートが置かれはじめました。イギリスからもってきているそうです。いわゆるテロ対策も兼ねているのでしょう。

エッシャーのミュージアムも近く、アンティークマーケットが開かれる木立の道Korte Voorhoutには仮設観覧席ができあがっています。国王の馬車がここを通ります。おじ&おば率は高いです。

ふだんどちらかというと服装は気にかけないオランダ人たちが、明らかに着飾っています。国王を乗せた馬車はあっという間に通り過ぎるはずで、その数分のために仮設観覧席を設け、着飾ざって待つ。私が知っている実利を重んじ合理的に行動するオランダ人らしくないふるまいに見えます。

観覧席でひときわ目立っていたのが、民族衣装というかその村の衣装に身を包んだおばさん&おじさん軍団です。オーフェレイセル州(Overijssel)の村、スタップフォルスト(Staphorst)の人々で、保守的なプロテスタントの人々が住む村だそうです。少年少女もいます。

いつもは自由に出入りできるビネンホフは、今日は関係者のみ。VIPバスからぞろぞろと要人たちが下りていきます。

スケジュールは、12:45国王と女王がノールドアインデ宮殿を出発→馬車でパレードしながらビネンホフへ→13:15Ridderzaalで国王がTroonrede(演説)→13:50ノールドアインデ宮殿に戻る→14:00ノールドアインデ宮殿のバルコニーで民衆に挨拶

イベント大国オランダのこと、タイトながらタイムスケジュールにきちんと進んでいくことでしょう。ビネンホフでの模様は生中継されるのでテレビで観覧、バルコニーに出るころにノールドアインデ宮殿に行く作戦をとりました。

ちなみに、Ridderzaalおよび玉座はこんな感じです。

演説が終わったところで、ノールドアインデ宮殿に向かいます。うげ、いつもの人間壁。ほっとんど何も見えません。

ほどなくして、国王、王女、国王の弟夫妻がバルコニーに出てきました。

「こんにちは~」と言い合っているようなカジュアルな挨拶です。手を振る王室の方々に対して熱狂するような雰囲気はなく、人々も親し気に手を振り返しています。

18世紀に歴史をたどれるPrinsjesdag、元々はウィレム五世の誕生日で祝日だったそうです。その息子のウィレム一世がオランダの初代国王となり、ヴァタビア革命の際は勲章を授与する日となり、19世紀に国会開幕の日として落ち着いたそうです。政局と絡んでいるのは間違いないようなのですが、何というか政治が醸すようなきな臭さはなく、純粋にオランダ国民としての誇りを再確認するような印象です。建国記念日っぽい感じ。

そして、このイベントを通じて国王・女王の機能について思うことがありました。日本の天皇・皇后が国会開幕のスピーチに政治色を出したらどう感じるかなと(ありえないとは思いますが、仮に)。国王・女王、天皇・皇后も民衆のために尽くすという思いは一緒だと思うのです。そんな人々から発せされるメッセージは、政治的な内容ながら政局のカラーが取り払われて民衆に届くのではないでしょうか。また政治家たちも、そのような立場からのメッセージを受け、国を担うものとして襟を正す思いになるのではないでしょうか。用意されたメッセージ原稿を読み上げるだけだったとしても。

国民に多大なる影響力をもつ人が政治関与しないことを高らかに宣言した上で、政治の核となる国会の開幕の日にスピーチをする。このパラドキシカルな行為を通してメッセージが清められ、「この国は正しい道にいくに違いない」と人々にそこはかとない安心感と希望を与えるのではないか。

歴史が作り上げてきた儀式、そして王室というのはそのようなパワーをもっているのかもしれません。そんなことを感じたPrinsjesdagでした。

 

 

 

 

 

 

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